函館の弁護士による慰謝料請求に関するコラム
 

• 浮気の時点で婚約が成立していたこと

婚約とは一般的にも用いられる言葉のとおり、お互いに将来結婚することを約束することです。

一般的には口約束や、長期間同棲しているといった事情だけではなく、婚約指輪の授受や親族や職場への紹介、式場の準備などの客観的な要素が婚約の成立には重要となります。

また、例えば、婚約が一度成立していたとしても、浮気の時点では婚約が別の理由によって解消されていた場合には、既に浮気の時点では法的に保護される婚約が存在しないことになりますから、浮気相手への慰謝料を請求することができないことになります。

• 浮気相手が婚約を知っていたこと

法律婚の場合の浮気相手への慰謝料請求の際に、既婚者であることを知っていることが必要であったのと同様に、婚約の場合には浮気相手が婚約について知っていたことが必要となります。

一方で、婚約については客観的な事情から判断することが困難な場合も多く、慰謝料を請求した際に相手から、婚約しているとは知らなかった、といった反論がされることが多いです。

また、婚約をしているのを知ってはいなかった（故意ではない）が、不注意で知らなかったという場合には、法律婚に比較して婚約の保護される程度が低いこととあいまって、さらに請求できる金額が少なくなってくる可能性が高いとも言えます。

婚約者と浮気相手が職場の同僚などではなく関係が深くない場合や、婚約者の存在について浮気相手に伝えていた旨の婚約者の証言といったような協力が得られない場合、浮気相手への慰謝料の請求が困難なケースもままあります。

• 婚約者の浮気相手に慰謝料を請求する際の注意点

婚約者の浮気相手に慰謝料を請求する際には、一般的にはいきなり裁判を提起するのではなく、まず話し合いで請求することが考えられます。

話し合いの結果、慰謝料の支払いについて合意ができた場合には、合意書を作成すべきです。

婚約者と婚約を解消せずに関係を継続していく場合には、婚約者との連絡や接触を禁止する条項をいれるべきでしょう。

慰謝料が分割払いになる場合には、公正証書で作成して不払いがあった場合には強制執行ができるようにしておくことも有用です。

他方で、婚約関係は、結婚を約束している段階であって結婚に至っていないことから、夫婦関係よりは法的保護が低いと考えられます。

そのため、浮気相手との浮気があったものの、婚約は継続してその後結婚に至ったというケースでは、浮気相手に慰謝料を請求することができるとしても、その金額は非常に低いものと評価される可能性が高いと言えます。

事実関係や求める慰謝料の金額に大きな隔たりがあって話し合いが難しい場合には、訴訟提起をして争うことも考えられます。